空中店舗とは?メリット・デメリットや物件を選ぶ際の注意点を解説
商業施設やオフィスビルの2階以上に位置する空中店舗は、路面店とは異なる独自の特徴を持っています。
賃料面での優位性や落ち着いた空間づくりが可能である一方、集客面での工夫が必要不可欠です。
本記事では、空中店舗の基本的な特徴から、業種による適性、効果的な運営方法、物件選びの重要ポイントまで、出店をご検討の方に向けて体系的に解説いたします。
空中店舗とは
空中店舗とは、商業施設やオフィスビルの2階以上に位置するテナントスペースのことを指します。
1階の路面店とは異なる特性を持ち、業種や運営方法によって独自の強みを発揮することができます。
空中店舗の定義
空中店舗は、建物の2階以上のフロアに設置された店舗やサービス提供スペースを指します。
一般的に建物のエレベーターやエスカレーター、階段を利用してアクセスする形態となります。路面店と比べると視認性は低くなりますが、その分、落ち着いた雰囲気や独自の空間作りが可能となります。
空中店舗に適した業種
空中店舗は、予約や紹介を中心とするビジネスモデルと相性が良いとされています。
美容室、エステサロン、マッサージ、医療系クリニック、学習塾、料理教室などが代表的です。これらの業種は、視認性よりも、空間の快適さや静かな環境を重視することが多いためです。
逆を言うと、急な立ち寄りやすぐに商品を手に取ってもらうことが重要な小売店(雑貨店やアパレルショップなど)や、大型の機材や商品の搬入出が頻繁に必要な業種については、運営面で課題が生じる可能性があります。
空中店舗の基本的な特徴
空中店舗の大きな特徴は、プライバシーが確保しやすく、落ち着いた店舗運営が可能な点です。
また、1階の路面店と比較して賃料が抑えられる傾向にあり、初期投資を抑えたい事業者にとってはメリットとなります。
一方で、来店のハードルが若干高くなることや、建物全体の営業時間に制約される場合があるなど、独自の運営上の特徴も持ち合わせています。
これらの特性を十分に理解し、事業に合わせて空中店舗を検討する必要があります。
空中店舗のメリット
空中店舗は、デメリットが多いイメージが持たれがちですが、路面店とは異なる独自のメリットがあります。コスト面から空間活用まで、空中店舗ならではの様々な利点を解説いたします。
コスト面でのメリット
●賃料が路面店より抑えられる
一般的に、空中店舗は1階の路面店と比べて賃料が20〜30%程度抑えられると言われています。人通りの多い通りに面した1階テナントは賃料が高額になりがちですが、上層階であれば比較的手頃な賃料で出店することができます。
●初期費用を抑えた出店が可能
賃料が抑えられることで、内装工事やPR施策など、他の重要な部分により多くの予算を配分することができます。
また、保証金や敷金などの初期費用も路面店と比べて抑えられる傾向にあります。
運営面でのメリット
●落ち着いた環境での営業
通りの喧騒から離れた場所にあるため、静かで落ち着いた環境を作りやすいのが特徴です。特に、美容サロンやマッサージ、エステなどのリラックスを重視するサービス業には大きなメリットとなります。
●顧客のプライバシー確保
2階以上に位置することで、通行人の視線を気にすることなく、よりプライベートな空間を提供できます。
医療系クリニックや、個別指導の学習塾など、顧客のプライバシーを重視するサービスには適している物件と言えるでしょう。
●建物のセキュリティによる安心感
商業ビルやオフィスビルに入居することで、建物の警備システムや防犯カメラなどのセキュリティ設備を活用できます。
夜間の営業も安心して行うことができるため、スタッフの安全面でも安心感があります。
空間活用のメリット
●自由度の高い店舗デザイン
通りからの視認性を考慮する必要が少ないため、店舗のコンセプトや用途に合わせた自由なデザインが可能です。壁面や窓の活用も、より柔軟に検討することができます。
●ゆとりある空間づくり
路面店のような通行人の動線を考慮する必要がないため、待合スペースやサービス提供スペースにゆとりを持たせることができます。顧客にとってより快適な空間を提供することが可能です。
●眺望を活かした特別な空間
高層階であれば、窓からの眺望を店舗の魅力として活かすことができます。
カフェやレストラン、エステサロンなどでは、特別な空間演出の要素として活用できます。
空中店舗のデメリット
空中店舗には様々なメリットがある一方で、いくつかの課題や制約もあります。
店舗選びの際はこれらのデメリットを十分に理解し、対策を検討することが重要です。
集客面でのデメリット
●通行人からの視認性の低さ
もっとも懸念されるデメリットとして、通行する人の目に留まりづらいことが挙げられます。
2階以上に位置するため、通行人からの店舗の発見がしづらいためです。
特に、建物の表示や看板が制限される場合、店舗の存在自体が気づかれにくくなってしまいます。
●アクセスまでの動線の長さ
エレベーターや階段を使って移動する必要があるため、来店までの心理的・物理的なハードルが高くなります。
特に、初めての来店客にとっては、店舗までの経路が分かりにくく、足が遠のく原因となることもあります。
●看板やサインの設置制限
建物の規則により、外部から見える看板やサインの大きさ、デザイン、設置場所に制限があることが多いです。
これにより、店舗の宣伝や案内が思うようにできない場合があります。
運営面でのデメリット
●建物の営業時間による制約
商業ビルやオフィスビルに入居する場合、建物全体の営業時間に合わせる必要があります。早朝や深夜の営業、定休日の変更など、営業時間の自由度が制限されます。
●エレベーター・階段の利用制限
建物の共用設備であるエレベーターや階段の使用には制限があることがあります。特に、搬入出や多数の来店客が重なる時間帯では、スムーズな店舗運営に支障をきたす可能性があります。
●搬入出の手間と制限
商品や材料、機材などの搬入出には、エレベーターや階段を使用する必要があり、手間と時間がかかります。また、搬入出可能な時間帯が制限されることも多く、効率的な運営の妨げとなることがあります。
設備面でのデメリット
●上下階への音や振動の配慮
フロアを共有する他のテナントへの配慮が必要です。特に、音や振動を伴う業種の場合、防音工事や設備の配置に十分な注意が必要となります。
●給排水設備の制約
上層階であるため、給排水設備の増設や変更が制限される場合があります。
特に、飲食店や美容室など、水回りを多用する業種では、設備面での制約が大きな課題となることがあります。
●空調管理の難しさ
建物全体の空調システムに依存する場合が多く、店舗独自の温度管理が難しいことがあります。また、上層階は日差しの影響を受けやすく、空調効率が悪化する可能性もあります。
空中店舗へ集客するポイント
視認性の低さなど空中店舗にはいくつかのデメリットが存在しますが、適切な対策を講じることで効果的な集客が可能です。
店舗への誘導を強化する
空中店舗への集客で最も重要なのが、店舗までの誘導です。
建物の1階入り口から分かりやすい看板やサインを設置し、エレベーターやエスカレーターまでの道順を明確に示すことが重要です。
また、建物のオーナーと相談し、共用部分にも効果的な案内表示を設置することで、初めての来店客でも迷わずに店舗にたどり着けるようにします。
情報発信を工夫する
SNSやWebサイトを活用し、店舗の場所や行き方を分かりやすく発信することが大切です。
特に、建物の外観写真や店舗までの道順を示す写真、店内の雰囲気が伝わる画像などを効果的に使用します。
また、Googleマップなどの地図情報も正確に登録し、アクセス方法を詳しく説明することで、来店への不安を解消することができます。
予約・紹介を重視した集客施策
空中店舗は通りすがりの来店が期待しにくいため、予約システムを活用した集客が効果的です。オンライン予約の導入や、既存のお客様からの紹介を促進する仕組みづくりを行います。
また、同じ建物内の他店舗や近隣店舗と連携し、相互送客の仕組みを作ることで、新規顧客の獲得につなげることができます。
空中店舗の集客では、しっかりとした誘導計画と情報発信、そして予約や紹介を中心とした仕組みづくりが重要です。これらの施策を組み合わせることでデメリットを補い、安定した集客を実現しましょう。
空中店舗物件を選ぶ際の注意点
空中店舗はその特性上、物件選びが事業の成否を大きく左右します。
以下の点に特に注意して物件を選定することが重要です。
建物設備の確認ポイント
エレベーターの数や大きさ、稼働時間は重要な確認ポイントです。
特に、搬入出や来店のピーク時に支障がないか、十分に確認が必要です。また、非常時の対応や、荷物用エレベーターの利用可否についても確認しましょう。
空調設備の管理方法や使用可能時間、個別空調の可否なども確認が必要です。
上層階は日当たりの影響を受けやすく、空調効率が営業に大きく影響します。
特に夏場や冬場の空調効果については、同じ建物の他テナントに実際の状況を確認することをお勧めします。
給排水設備についても、増設や変更の可否、水圧の状況など、業態に応じた確認が重要です。上層階では水圧が弱まる可能性もあるため、美容室や飲食店など、水を多用する業種では特に注意が必要です。
建物・周辺環境の調査
同じ建物内の他テナントの業種構成は、相乗効果が期待できるか、競合となるかの観点で重要です。
また、各テナントの営業時間帯も確認し、人の流れを把握する必要があります。
来館者の属性や時間帯による人の流れ、周辺のオフィスや商業施設の状況なども、事前に十分調査する必要があります。特に、ランチタイムやアフター5など、時間帯による来客傾向の変化をしっかりチェックしましょう。
建物の外観や共用部分の管理状態も、店舗イメージに影響するため、注意深く確認することを推奨します。
清掃状態や設備の修繕状況なども、オーナーや管理会社の建物運営に対する姿勢を知る重要な指標です。
契約条件の確認事項
建物の営業時間や定休日の規則は、必ず確認を行いましょう。
希望する営業時間が建物の規則と合致するか、特に早朝や深夜の営業、祝日の営業については、詳しく確認することが大切です。
看板やサインの設置に関するルール、工事の可否や制限事項についても詳しく知っておくとよいでしょう。
建物の外観を損なわない範囲での看板設置が一般的ですが、具体的にどの程度まで認められるのか、事前に明確にしておくことが重要です。
共益費の内容や、空調・光熱費の請求方法なども、収支計画に影響する重要です。
特に、共用部分の維持管理費用や、空調使用料の計算方法については、詳しく確認しておきましょう。
自身の事業計画との整合性を慎重に判断することで、より良い物件選びが可能となります。また、不明な点がある場合は、建物のオーナーや管理会社に積極的に質問し、後々のトラブルを防ぐことが大切です。
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