造作譲渡とは?居抜き物件契約時に確認すべきポイント、注意点を解説
「店舗や事務所の内装工事にかかる費用を抑えたい」「開業までの時間を短縮したい」そんな方に注目されているのが造作譲渡です。
前テナントから設備や内装を引き継ぐことで、スムーズな開業が可能になります。本記事では、造作譲渡の基本的な内容から契約時の確認ポイント、注意点までを詳しく解説します。
造作譲渡とは
店舗や事務所を借りる際、前のテナントが設置した内装や設備を次の入居者が譲り受けることを「造作譲渡」といいます。
通常、譲渡には売買契約が伴い、双方の合意のもとで譲渡価格が決定されます。
造作譲渡を利用することで、開業までの時間と費用を抑えることができるため、特に居抜き物件では一般的な取引方法として活用されています。
造作譲渡の対象となるもの
造作譲渡の対象となる主な設備や内装には、カウンター、システムキッチン、棚、空調設備、照明器具、間仕切りなどが含まれます。
これらの設備は通常、賃借人が自身の費用で設置したものであり、原則として賃借人の所有物となります。
ただし、物件の契約内容によっては貸主の承諾が必要となる場合もあります。
造作買取請求権について
借地借家法第33条では、賃借人が設置した造作について、契約終了時に貸主に対して買取を請求できる権利(造作買取請求権)が定められています。
ただし、実務ではこの権利を予め放棄する特約を契約に含めることが一般的であり、貸主が必ず買取に応じるわけではありません。
そのため、賃貸契約を結ぶ際には、この権利の有無や契約内容を事前に確認することが重要です。
造作譲渡のメリット・デメリット
造作譲渡を受ける側のメリット
造作譲渡を活用すれば、内装工事や設備の設置にかかる初期費用を大幅に抑えることができます。
また、工事期間が不要なため、契約後すぐに営業を開始することも可能です。
特に飲食店の場合、厨房設備や給排水設備などをそのまま使用できることは大きな利点となります。
ただし、貸主の同意が必要な場合があるため、事前に契約内容を必ず確認しましょう。
造作譲渡する側のメリット
退去時の原状回復費用を節約できることが最大のメリットです。
通常なら内装や設備の撤去費用が必要になりますが、造作譲渡であれば新テナントがそのまま使用するため、これらの費用が不要になります。
また、譲渡価格によっては、設置した設備の残存価値を回収することも可能です。
ただし、譲渡価格の設定次第では、新テナントが見つかりにくくなるリスクも考慮する必要があります。
造作譲渡のデメリット
ただし、造作譲渡には注意すべき点もあります。譲り受ける側としては、設備の経年劣化や不具合のリスクを考慮する必要があります。
また、必ずしも自分の理想通りのレイアウトやデザインではない可能性もあるため、改装の追加費用が発生することも考えられます。
さらに、貸主によっては造作譲渡自体を認めていないケースもあるため、事前に契約内容を十分に確認することが不可欠です。
譲渡する側も、新テナントが見つからない場合は結局原状回復が必要になる可能性があることを念頭に置く必要があります。
特に、造作譲渡を希望する場合は、早めに次のテナントを探す努力が求められます。
造作譲渡には「造作譲渡契約」が必要
造作譲渡を行う際は、前テナントと新テナントの間で造作譲渡契約を結ぶ必要があります。
この契約は物件の賃貸借契約とは別個の契約として扱われ、通常はオーナーの承諾を得たうえで締結されます。
ただし、賃貸借契約の内容によっては造作譲渡が制限されている場合があるため、事前に契約条件を確認することが重要です。
造作譲渡契約に記載すべき内容
造作譲渡契約では、譲渡対象物件の詳細な一覧と譲渡金額を明確にしておくことをおすすめします。
具体的には設備や内装の種類、数量、状態などを詳しく記載し、現状確認を行うことで後のトラブルを防げるためです。
また、譲渡金額の支払方法や引き渡し時期、譲渡後の設備の不具合に関する責任の所在なども明記する必要があります。
特に、譲渡後の修繕義務や保証の有無については、当事者間で合意を取り、明確に契約書に記載することが望ましいです。
オーナーの承諾について
造作譲渡を行う場合、将来的なトラブルを防ぐために多くのケースでオーナーの承諾が必要となります。
オーナーの承諾は書面で得ることが望ましく、賃貸借契約書に造作譲渡に関する条項を含めることも一般的です。
なお、オーナーが造作譲渡を認めていない場合、事前に交渉し、承諾を得ることが求められます。
また、オーナーによっては造作譲渡に対して別途承諾料を求めることがあるため、その点も事前に確認しておきましょう。
造作譲渡の居抜き物件契約時に確認すべきポイント
設備の状態確認
設備の実地確認は契約前に必ず行いましょう。
特に給排水設備や空調設備などの重要な設備については、専門家による点検を依頼することをおすすめします。
設備の状態が契約時の説明と異なっていた場合、開業後に予期せぬ修繕費用が発生する可能性があります。
さらに、電気・ガス・換気設備などの安全性も確認し、法令基準を満たしているかをチェックすることが重要です。
必要な許認可の確認
前テナントが取得していた営業許可や消防法関連の許可について、新規取得が必要か継続して使用することが可能かを確認しましょう。
特に飲食店の場合、保健所の営業許可や消防署への届出など、様々な許認可が必要となるため、事前の確認が不可欠です。
また、建築基準法や用途地域の制約によっては、希望する業態での営業が制限される可能性があるため、自治体や関係機関への事前相談も推奨されます。
譲渡価格の妥当性
造作物件の譲渡価格は、設備の経過年数や市場相場を考慮して決められます。
近隣の同業種の居抜き物件価格などと比較しながら、価格の妥当性を慎重に判断する必要があります。
また、高額な修繕や設備の交換が必要な場合は、それらの費用も考慮に入れて交渉を行うことが賢明です。
加えて、造作譲渡契約後の追加費用が発生しないよう、譲渡対象の設備に関する保証の有無を確認しておきましょう。
造作譲渡の注意点
契約書の内容を慎重に確認
ひとつめの注意点は、造作譲渡契約書の内容です。
特に譲渡対象となる造作物の範囲や瑕疵担保責任の有無、修繕費用の負担に関する取り決めなどは細かく確認する必要があります。
不明な点がある場合は、不動産の専門家や弁護士に相談しましょう。
また、賃貸借契約と造作譲渡契約の条項が矛盾しないか確認し、将来的なトラブルを防ぐためにも慎重に検討することを推奨します。
固定資産税の扱い
造作物件を譲り受けた場合、その物件が償却資産として扱われ、固定資産税または償却資産税の納税義務が発生する可能性があります。
特に法人や個人事業主が設備を取得する場合、償却資産申告が必要となる場合があるため、具体的な税額や申告の要否については、管轄の税務署や税理士に確認することが望ましいでしょう。
解約時の取り扱い
将来の店舗移転や事業終了時に備えて、造作物の撤去義務や原状回復の範囲についても事前に確認が必要です。
オーナーとの賃貸借契約書に記載された原状回復条項と、造作譲渡契約の内容に齟齬がないかどうかも重要なチェックポイントとなります。
また、原状回復費用の負担範囲についても、事前に明確にしておくことが望ましいです。
保険の加入
譲り受けた設備や内装に対する火災保険、施設賠償責任保険への加入も検討すべき重要事項です。
万が一の事故や災害に備えて、適切な保険でリスクをカバーすることをおすすめします。
特に、造作物の修繕や交換に関する補償内容を確認し、営業継続に影響が出ないよう備えておくと良いでしょう。
造作譲渡は、店舗や事務所の開業時のコストと時間を大幅に削減できる有効な選択肢です。
前テナントの内装や設備を引き継ぐことで、スムーズな開業が可能となります。
ただし譲渡を受ける際は、設備の状態確認や必要な許認可の確認、適切な契約書の作成など、いくつかの手間もかかります。
特に契約面では、前テナントとの造作譲渡契約とオーナーとの賃貸借契約の両方において、権利関係や責任の所在を明確にすることが重要です。
また、設備の状態確認や保険加入なども含め、将来的なリスクに備えた準備を整えることで、安心して造作譲渡物件を活用することができます。
居抜き物件をお考えの方は、この記事で解説した内容を参考に、専門家への相談も検討しながら、慎重に契約を進めていくことをおすすめします。
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